アブラソコムツは、世界中の熱帯・温帯の深海に生息する大型の深海魚です。見た目は食欲をそそる白身魚ですが、体内にゲムピルオイル(wax ester:ワックスエステル)という人間には消化できない油脂を大量に含み、食べ過ぎると激しい下痢(油性下痢)を引き起こすことで知られています。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 学名 | Ruvettus pretiosus |
| 分類 | 条鰭綱 スズキ目 サバ科に近い位置(ゲンゲ科・タチウオ亜目に分類) |
| 英語名 | Oilfish(オイルフィッシュ) |
| 体長 | 最大約200cm |
| 体重 | 最大約65 kg |
| 体色 | 暗褐色〜黒色 |
| 生息水深 | 100〜800m(主に200〜600m) |
| 分布 | 太平洋・大西洋・インド洋の熱帯・温帯域 |
| 食性 | 魚類・イカ・甲殻類 |
アブラソコムツの身は一見すると白く美しい白身魚ですが、筋肉組織にワックスエステル(蝋状の油脂)が大量に蓄積しています。
ワックスエステルは人間の消化酵素では分解・吸収できないため、大量に食べると腸内に蓄積し、油性の下痢(Keriorrhea:ケリオレア)を引き起こします。症状は「オレンジ色の油性液体が肛門から漏出する」というもので、個人差はありますが30g以上食べると症状が出ることが多いと言われています。
日本では食品衛生法により、アブラソコムツの販売・流通について注意喚起が求められています。市場・飲食店でアブラソコムツを提供する場合、種名の表示義務と消費者への注意喚起が必要です。
アブラソコムツとよく混同されるのがバラムツ(Lepidocybium flavobrunneum)です。
| 比較項目 | アブラソコムツ | バラムツ |
| 学名 | Ruvettus pretiosus | Lepidocybium flavobrunneum |
| 英語名 | Oilfish | Escolar / Snake mackerel |
| 体のワックスエステル含量 | 比較的少ない(30g以上で症状が出始める) | 非常に多い |
| 日本の規制 | 表示・注意喚起が必要 | 食品衛生法で販売禁止(1970年〜) |
| 外見 | やや褐色・皮膚に突起 | より黒く滑らか |
バラムツは日本では食品衛生法で販売が禁止されていますが、アブラソコムツは表示義務付きで販売可能です(→ バラムツの詳細は別記事参照)。
パプアニューギニア・ソロモン諸島などの太平洋島嶼国では、アブラソコムツは伝統的な食料として食べられてきました。現地の人々は食べる量を少量に抑える知恵を持っており、大量摂取による問題を回避しています。
欧米の一部レストランでは「白身魚」として提供されたこともありますが、下痢のトラブルが報告されたため、イタリア・日本・デンマーク・スウェーデンなどで規制が設けられています。
アブラソコムツは、食品安全の観点から特に注意が必要な深海魚です。
「美味しそうな白身魚」に見えても、食べる際は種名を確認することが重要です。アブラソコムツは深海魚の中でも「食の注意情報」として覚えておく価値がある魚です。