ラブカ(学名:Chlamydoselachus anguineus)は、深海に生息するサメの一種で、英語では「Frilled Shark(フリルドシャーク)」とも呼ばれます。その名の通り、6対のえらが「フリル(ひだ)」のように見えることからこの名がつきました。
外見はサメというよりウナギやヘビに近く、細長い体と蛇のような動きを持ちます。約8,000〜9,500万年前(白亜紀中〜後期)から現在とほぼ同じ形を保ってきたとされる「生きた化石」であり、古代の海を想像させる存在です。
ラブカの体は細長く、成体のメスで最大2m前後になります(オスはやや小型)。背鰭は1枚で後方に位置し、体のシルエットは一般的なサメとは大きく異なります。色は濃い茶色〜暗灰色。
多くのサメは5対のえらを持ちますが、ラブカは6対のえらがあり、これが原始的な特徴の一つです。第1対のえらは左右でつながってフリル状に見えるため「ラブカ(襟巻きサメ)」という名前になりました。
ラブカの歯は三叉の鉤状(三本の尖った突起が1本の歯を形成)で、上下顎にびっしりと並んでいます。歯の数は約300本。この構造はイカやタコなどの柔らかい獲物を絡め取るのに適しています。
ラブカは太平洋・大西洋・インド洋の広い範囲に分布し、日本近海(特に駿河湾・相模湾・土佐湾)でも比較的よく目撃されます。
生息深度は通常200〜1,200m(文献によっては最大1,500m超)ですが、稀に浅い水域で発見されることもあります。底生性ではなく、中層を漂うように泳ぐ生態を持ちます。
ラブカの主な獲物はイカ・タコなどの頭足類と小型の魚類です。体を蛇のように湾曲させ、バネのように体を伸ばして獲物に素早くかみつく「アンブッシュ型」の捕食戦略をとると考えられています。
体の柔軟性と大きく開く顎(顎は前方に突き出せる構造)を組み合わせることで、自分の体の半分ほどの大きさの獲物も飲み込めるとされています。
ラブカ科(Chlamydoselachidae)は化石記録によると約9,500万年前(白亜紀中期)にまでさかのぼります。現生のラブカはこの古代のラブカと形態的に非常によく似ており、長い時間をほぼ変わらぬ姿で生き続けてきた証拠です。
一般的なサメが進化・多様化する中、ラブカは深海という安定した環境で形態変化の必要がなかったと考えられています。
ラブカの繁殖には驚くべき特徴があります。卵胎生で、メスが体内で卵を孵化させ仔魚を産みます。
妊娠期間は推定で約3.5年(42ヶ月程度)とも言われており、これは脊椎動物の中でも最長クラスです(ただし科学的確認は困難)。一度に産む仔魚は2〜15匹程度で、仔魚は比較的大きな状態で生まれます。
深海の低代謝環境が長い妊娠期間を生み出していると考えられています。
ラブカは主に漁網への混獲で発見されます。生きたままの個体が浅い場所で目撃されることは稀ですが、日本では静岡県・高知県などで時折報告があります。
2007年には静岡県沼津市の定置網に生きたラブカが入り、水族館に一時展示されましたが、数時間で死亡しました。2015年にはポルトガルの漁師が深海底引き網でラブカを引き揚げた映像がSNSで広がり、話題になりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Chlamydoselachus anguineus |
| 英名 | Frilled Shark(フリルドシャーク) |
| 別名 | 襟巻きザメ |
| 全長 | メス最大約2m、オス約1.5m |
| 生息深度 | 200〜1,500m |
| 分布 | 太平洋・大西洋・インド洋 |
| 食性 | イカ・タコ・小魚 |
| 妊娠期間 | 推定約3年半 |
| 化石記録 | 約9,500万年前〜 |
ラブカ(フリルドシャーク)は、古代の海から形を変えずに生き続けてきた「生きた化石」です。その独特な外見と生態は、深海という特殊な環境が生み出した進化の奇跡です。日本近海にも生息しており、水族館での稀な展示が話題になることもあります。
ゴブリンシャーク(ミツクリザメ)との比較はゴブリンシャーク(ミツクリザメ)の特徴・生息地もご覧ください。深海魚の一覧は深海魚 種類・一覧まとめ【図鑑サイト完全版】をどうぞ。