デメニギス(学名:Macropinna microstoma)は、太平洋の深海に生息する小型の魚で、生物学上最も奇妙な外見を持つ魚の一つです。最大の特徴は「透明な頭部」——頭の上半分が透明なドーム状の「シールド」で覆われており、その内部に大きな緑色の筒状の目が収まっています。
英語名は「Barreleye Fish(バレルアイ・フィッシュ)」——樽(バレル)のような形の目からついた名前です。日本語のデメニギスは「出目鰊」で、鰊(ニシン)の仲間に出目の魚という意味です。
デメニギスの透明なドームは、柔軟な透明組織でできた「液体で満たされたシールド」です。この中には大量の液体が詰まっており、目を保護するとともに、目が動く空間を確保しています。
長年、科学者たちはデメニギスの「目」が頭の前面にある2つの穴(実はこれは鼻孔)だと思っていました。しかし水族館などで生体を観察すると、透明ドームがつぶれてしまい正確な構造が分からなかったのです。
2009年、モントレー湾水族館研究所(MBARI)が深海ロボット(ROV)で生きたデメニギスを初めて詳細に撮影し、「頭の中の緑色の目が前を向いたり上を向いたりする」ことを初めて映像で確認しました。この発見は世界的なニュースとなり、デメニギスは一躍有名になりました。
デメニギスの目は大きな筒状で、上方向に向けることができます。これにより、上から差し込むわずかな光のシルエットをとらえ、水面に近い層を泳ぐ小魚やプランクトンを発見します。
目が緑色に見えるのは、黄色い色素フィルターが存在するためです。このフィルターは生物発光(青い光)を遮断し、わずかな太陽光を効率よく検出するのに役立つとされています。つまり天然のサングラスのような役割を果たしているのです。
デメニギスの体長は通常10〜15cm程度の小型魚です。体は側扁(左右に薄い)しており、うろこは細かく透明に近いです。腹面には小さな発光器が並んでおり、カウンターイルミネーションに使用されると考えられています。
透明なドームの中には大きな緑の目が2つ。その下には小さな口。この組み合わせが「まるで宇宙人のような」見た目を生み出しています。
デメニギスは太平洋の亜熱帯〜温帯域に広く分布し、日本近海でも記録があります。通常は水深500〜800m付近に生息しますが、昼間は深く、夜間は比較的浅い層に浮上する日周鉛直移動(垂直移動)を行うとされています。
デメニギスの主な食餌はクラゲ・サルパなどのゼラチン質の小動物や、小型の甲殻類です。管水母(カツオノエボシなどの仲間)の触手の中に紛れ込んで獲物を取るという観察報告もあります。透明ドームは、刺胞動物の刺胞(毒針)から目を守るためのプロテクターとしても機能するかもしれません。
2009年のMBARIの映像公開が最大のきっかけです。「透明な頭に目が動く魚」というビジュアルのインパクトが強烈で、YouTubeやSNSで拡散し、数千万回以上再生されました。深海生物の中でも「ビジュアルで驚ける」代表格として、現在も多くの動画・記事で紹介されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Macropinna microstoma |
| 英名 | Barreleye Fish(スピーク・フィッシュとも) |
| 分類 | ニギス目デメニギス科 |
| 体長 | 10〜15cm |
| 生息深度 | 200〜1,000m(主に500〜800m) |
| 分布 | 太平洋(温帯〜亜熱帯) |
| 食性 | クラゲ・小型甲殻類・サルパ |
| 特徴 | 透明なドーム、回転する緑色の目 |
デメニギスは「透明な頭の中で目が動く」という、まるでSFのような形態を持つ深海魚です。その独特な視覚システムは、光のほとんど届かない深海で生き残るための精巧な進化の産物です。2009年の映像公開によって世界的に有名になり、深海生物への関心を高めるきっかけを作った存在でもあります。
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