ミツクリエナガチョウチンアンコウは、深海アンコウ類(角釣魚目)の中で最も大型の種のひとつとして知られる深海魚です。メスは体長最大46cmにも達します。英語名「Triplewart seadevil(三つのイボを持つ海の悪魔)」は、その光る疑似餌(イリシウム)の柄に3つのイボ状突起があることに由来します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 学名 | Cryptopsaras couesii |
| 分類 | 条鰭綱 アンコウ目 エナガチョウチンアンコウ科(Ceratiidae) |
| 英語名 | Triplewart seadevil |
| 体長 | メス:最大46cm、オス:最大16mm(世界最小クラスの魚のひとつ) |
| 体色 | 黒褐色 |
| 生息水深 | 900〜4,000m |
| 分布 | 世界中の熱帯・温帯の深海 |
| 食性 | 深海魚・イカ(メスのみ)。オスは繁殖後に食事不要 |
チョウチンアンコウ類の最大の特徴は、頭の先端から伸びる疑似餌(イリシウム:illicium)です。ミツクリエナガチョウチンアンコウのイリシウムには、3つのイボ状突起(ワート)があり、これが種名「Triplewart(三ツ瘤)」の由来です。
イリシウムの先端には発光器(エスカ:esca)があり、青白く光ります。暗黒の深海で獲物(魚・イカなど)がこの光に引き寄せられると、大きな口で一気に飲み込みます。
発光の仕組みはルシフェリン-ルシフェラーゼ反応ではなく、発光バクテリアとの共生によるものであることが多くのアンコウ類で確認されています。
ミツクリエナガチョウチンアンコウの雌雄差は深海魚の中でも極端で、メスが最大46cmに達するのに対し、オスは最大わずか16mmです。
これほど大きな雌雄の体格差は、脊椎動物の中でも最大クラスとされており、「同じ種の生き物か?」と思わせるほどの違いがあります。
チョウチンアンコウ類の有名な生態として、性的寄生(Sexual parasitism)があります。
孵化したオスは当初は自由遊泳しますが、やがて嗅覚でメスを探し出し、メスの体に咬みつきます。時間をともに経過すると、オスの体はメスと血管・組織レベルで融合し、最終的にはオスが「メスの組織の一部」となります。
融合したオスは眼・消化器官が退化し、精巣だけを機能させ続ける「生殖補助装置」となります。一方のメスはオスが必要なタイミングで精子を受け取り、受精します。
ミツクリエナガチョウチンアンコウは水深900〜4,000メートルという深海に生息します。餌が乏しく、出会いの機会も少ないこの環境では、上述の「性的寄生・融合」という極端な繁殖戦略が合理的です。
大きな口と伸縮する胃を持つメスは、自分より大きな獲物も飲み込むことができます。深海では「次にいつ食べられるかわからない」ため、一度捉えた獲物は大きさに関わらず取り込む戦略をとっています。
チョウチンアンコウの仲間(角釣魚目)には約150種が知られています。ミツクリエナガチョウチンアンコウはその中でも:
という特徴で区別されます。
ミツクリエナガチョウチンアンコウは、チョウチンアンコウ類の生態的特徴を最も誇張された形で体現した深海魚です。
光と融合で「ひとつの生命体」となる——このドラマチックな生き様が、深海の暗闇の中で今日も繰り広げられています。