リュウグウノツカイが浜辺に打ち上げられると、日本ではたびたび「地震の前兆では」という声が上がります。2011年の東日本大震災の前年(2009〜2010年)にリュウグウノツカイの打ち上げが相次いだこと、また2024年の能登半島地震前後でも目撃情報が話題になりました。
この「リュウグウノツカイ=地震の前兆説」は本当なのでしょうか?科学的に検証します。
リュウグウノツカイ(学名:Regalecus glesne)は、世界最長の硬骨魚として知られ、全長は最大で11mにも達します。深海(水深200〜1,000m)に生息し、通常は人間の目に触れることがほとんどありません。
弱ったり死んだりすると浮力を失い、海岸に流れ着くことがあります。この「打ち上げ」がニュースになるのは、その巨大な体と日常的に見られない希少性によるものです。
| 年 | 場所 | 備考 |
|---|---|---|
| 2009〜2010 | 石川・富山・京都など日本海沿岸 | 複数の打ち上げが続く |
| 2011 | 東日本大震災(3月11日) | 「2年前から打ち上げが多かった」と後から話題に |
| 2019 | 富山・石川・三重など | 単年では異例の多さ |
| 2024 | 能登半島地震前後 | SNSで「前兆だった」と拡散 |
2010年にはチリ地震・ハイチ地震の直前に南米・カリブ海でリュウグウノツカイが打ち上げられたという情報もあります(ただし因果関係は未確認)。
2019年、神戸大学等の研究グループが1928年〜2011年の日本近海での深海魚打ち上げ記録と地震データを照合した研究を発表しました。
結論:「統計的に有意な相関は認められない」
深海魚の打ち上げが多い年に必ずしも大地震が起きているわけではなく、大地震の前に必ず深海魚の打ち上げが増えるわけでもないことが示されました。
地震の前に地殻からの電磁波やガスが放出され、深海魚がそれを感知して浅瀬に逃げてくる、という説があります。
しかし、リュウグウノツカイが浅瀬に打ち上げられるのは死んだ後か、著しく衰弱した後であることがほとんどです。元気に泳ぎながら浅瀬に来るのではなく、「漂着」が実態です。衰弱の原因として地震前兆の電磁波を特定するのは非常に困難です。
地震が起きた後に「そういえば地震前にリュウグウノツカイが打ち上げられていた」と記憶が呼び起こされやすいという「確証バイアス」の問題もあります。地震が起きなかった年にも打ち上げはありますが、それはあまり話題になりません。
地震とは無関係に、リュウグウノツカイが浅瀬に流れ着く理由として以下が考えられます。
リュウグウノツカイの打ち上げが「異常」に見えるのは、普段深海にいる珍しい魚だからです。しかし深海魚の漂着は日常的に起きており、たまたまニュースになる頻度が変化しているだけかもしれません。SNSの普及により、以前は地元の漁師しか知らなかった情報が全国・全世界に拡散されるようになったことも「最近増えた」という印象につながっています。
現時点での科学的見解は以下の通りです。
> リュウグウノツカイの打ち上げと地震の間に、統計的・科学的に有意な因果関係は確認されていない。
ただし、深海生物が地震前兆の電磁波・地殻変動・地下ガスなどに敏感である可能性は完全には否定できず、今後の研究が待たれます。
「リュウグウノツカイが打ち上げられたら地震が来る」という伝承は、人間が不思議な現象に意味を見出そうとする自然な心理から生まれたものです。しかし現在の科学的知見は、両者の因果関係を支持していません。
リュウグウノツカイが浜辺に現れたとき、地震の前兆として恐れるより、まずその神秘的な姿に感動し、適切に自然保護機関へ通報することが大切です。
リュウグウノツカイの生態・特徴はリュウグウノツカイとは?伝説の巨大魚の真実をご覧ください。深海魚の種類一覧は深海魚 種類・一覧まとめ【図鑑サイト完全版】もどうぞ。