ダイオウホウズキイカは、南極海の深海に潜む世界最大の無脊椎動物です。名前はよく似ていますが、ダイオウイカ(Architeuthis dux)とは異なる種で、外套長(胴の長さ)はダイオウイカを上回ることが確認されています。
「ダイオウホウズキイカ」という和名は、胴体がホウズキ(鬼灯)のように丸みを帯びていることに由来します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 学名 | Mesonychoteuthis hamiltoni |
| 分類 | 軟体動物門 頭足綱 ツツイカ目 ホウズキイカ科 |
| 英語名 | Colossal squid(コロッサルスクイッド) |
| 外套長(胴) | 最大約2.5m(全長は推定10〜14m) |
| 体重 | 最大確認例で約495 kg(世界最重量の無脊椎動物) |
| 生息水深 | 1,000〜2,200m |
| 分布 | 南極海(南氷洋)周辺 |
| 食性 | 深海魚(メカジキ・パタゴニアトゥースフィッシュなど)、その他頭足類 |
「ダイオウイカとどちらが大きいの?」——これが最もよく聞かれる質問です。
| 比較項目 | ダイオウホウズキイカ | ダイオウイカ |
| 学名 | Mesonychoteuthis hamiltoni | Architeuthis dux |
| 外套長 | 最大2.5m程度 | 最大2.0m程度 |
| 全長(触腕含む) | 推定10〜14m | 最大13m前後 |
| 体重 | 最大約495 kg | 最大約275 kg |
| 触腕の特徴 | 鈎(かぎ爪)型のフック | 吸盤(鋸歯状リング付き) |
外套長と体重ではダイオウホウズキイカが世界最大。一方、全長(触腕を伸ばした長さ)ではダイオウイカが長くなる場合もあります。
ダイオウホウズキイカの目の直径は最大で約27〜30cm。これは現在知られているすべての動物の中で最大の目です。
暗黒の深海で光をできるだけ多く取り込むために巨大化したと考えられており、生物発光する天敵(マッコウクジラなど)を遠くから察知する能力も持つとされます。
ダイオウイカの触腕には鋸歯状リングを持つ吸盤がありますが、ダイオウホウズキイカの触腕(捕食腕)には回転式のカギ爪(スイベルフック)が並んでいます。
このカギ爪は360度回転し、獲物に食い込むと外れにくい構造になっています。マッコウクジラの皮膚にダイオウホウズキイカのカギ爪による大きな傷が残っていることが報告されており、その捕食力の凄まじさを物語っています。
ダイオウホウズキイカの体組織には塩化アンモニウムが大量に蓄積されており、これが体の比重を海水と近づけて浮力を生み出しています。このため、筋力を使わず深海をゆったりと漂うことができますが、アンモニア臭が強いため食用には向きません。
ダイオウホウズキイカの天敵はマッコウクジラです。マッコウクジラの胃の内容物を調べると、ダイオウホウズキイカのくちばし(嘴)が多数見つかります。
一方、マッコウクジラの体にはダイオウホウズキイカのカギ爪が残した巨大な円形の傷跡が確認されており、捕食される側も必死の抵抗をしていることが推測されます。深海数千メートルの暗闇で繰り広げられる巨人同士の闘いは、今なお謎に包まれています。
ダイオウホウズキイカが科学的に存在を認められたのは1925年のこと。マッコウクジラの胃の中から触腕の断片が発見され、新種として記載されました。
2003年、ニュージーランド近海でパタゴニアトゥースフィッシュ(メロ)の延縄漁中に生きた成体が初めて捕獲されました。外套長151cm、体重300kgという記録的な個体でした。
2007年、南極海のロス海でさらに大型の個体が捕獲されました。外套長230cm、体重495 kgという現在の記録保持個体で、ニュージーランドの博物館に冷凍保存されています。解凍・標本化の作業は世界中のメディアが注目する中で行われました。
現在、世界で最もダイオウホウズキイカの研究・展示が進んでいるのがニュージーランドのテ・パパ博物館(Te Papa Tongarewa)(ウェリントン)です。2007年に捕獲された個体の標本が展示されており、その巨大さを実感できます。
日本国内では生体・完全標本の展示はありませんが、国立科学博物館(東京)や一部の海洋博物館でダイオウホウズキイカの解説パネル・模型を見ることができます。
ダイオウホウズキイカは、今なお生態の多くが謎に包まれています。
「ダイオウイカよりも大きな怪物が深海にいる」——この事実が確認されたのはわずか20年ほど前のこと。南極の深海にはまだどれほどの驚きが眠っているのでしょうか。