メンダコは、深海に生息するタコの一種で、その愛らしい見た目から「世界で最もかわいいタコ」とも称されます。英語名は「Dumbo Octopus(ダンボ・オクトパス)」——ディズニーの象キャラクター「ダンボ」の大きな耳を連想させる、ヒレのような2枚の耳(腕の付け根近くにある腕間膜が変化したもの)が名前の由来です。
正式な分類ではメンダコ属(Grimpoteuthis 属)に属し、世界に16種前後が知られています。深海に生息するタコとしては最も深い場所に生息する種の一つで、水深400mから7,000m超という極めて深い環境に適応しています。
メンダコ最大の特徴は、頭(外套膜)の左右に生えたヒレです。このヒレをゆっくりばたつかせることで水中を漂うように移動します。その動きはクラゲのようにも見え、深海でのんびり泳ぐ姿は多くの人を魅了します。
体は半透明〜白色〜オレンジ色などで、種によって色合いが異なります。目はまん丸で大きく、まるでぬいぐるみのようです。体長は通常20〜30cm程度ですが、最大で約2m近くになる種(Grimpoteuthis boylei)もあります。
8本の腕は腕間膜(傘のような膜)でつながっており、腕を広げるとパラシュートのように見えます。この構造を利用して獲物を包み込んで捕食します。
メンダコは世界中の深海に広く分布しており、太平洋・大西洋・インド洋・南極海でも記録されています。通常の生息深度は1,000〜4,000mですが、7,000mを超える超深海でも目撃されています。
海底付近に生息することが多く、海山(海底の山)や大陸斜面の周辺に集まる傾向があります。
メンダコの主な獲物は、海底に生息する小型の甲殻類・貝類・多毛類(ゴカイの仲間)などです。腕を広げて獲物を包み込み、腕間膜でくるんで口に運ぶ独自の捕食スタイルを持ちます。
タコには一般的に「墨を吐いて身を守る」習性がありますが、メンダコは墨袋が退化しているため墨を吐けません。深海では天敵から逃げる必要性が低く、墨の機能が失われたと考えられています。
タコの繁殖に関して、多くの浅海種はメスが一度に大量の卵を産んで死ぬ「一回繁殖型」ですが、メンダコは異なる戦略を持ちます。
メス個体を調べると、発達段階の異なる複数の卵が体内に同時に存在することが分かっています。これは「随時産卵型」の可能性を示唆しており、条件が整ったときに卵を産み続けられる仕組みかもしれません。深海という食料が乏しく不安定な環境への適応と考えられています。
メンダコは飼育が極めて難しく、長期展示に成功した水族館は世界でも非常に少数です。浅い水槽では水圧が不足し、また深海の低温環境を人工的に維持するのも難題です。
日本では沼津港深海水族館や竹島水族館などが短期間の生体展示に成功したことがあります。見られるかどうかは運次第なため、水族館のSNSをチェックしてから訪問するのがおすすめです。
メンダコ属には約16種が記録されており、代表的なものを以下に示します。
| 種名 | 特徴 |
|---|---|
| Grimpoteuthis boylei | 最大種(最大約2m) |
| Grimpoteuthis discoveryi | 南大西洋産 |
| Grimpoteuthis bathynectes | 太平洋産 |
| Grimpoteuthis tuftsi | 北東太平洋に分布 |
2022年、海洋探査船の深海カメラがメンダコを撮影した映像がSNSで拡散し、数百万回再生を記録しました。その可愛らしい動きに「リアルポケモン」「深海の妖精」などのコメントが殺到し、一時的に深海生物ブームを引き起こしました。
| 項目 | 内容 |
| 分類 | タコ目メンダコ科メンダコ属 |
| 学名 | Grimpoteuthis spp. |
| 英名 | Dumbo Octopus |
| 体長 | 通常20〜30cm(最大約2m) |
| 生息深度 | 400〜7,000m超 |
| 食性 | 甲殻類・貝類・多毛類 |
| 特徴 | 耳状ヒレ、墨袋退化、腕間膜 |
| 分布 | 世界の全海洋 |
メンダコは深海という過酷な環境に独自の進化で適応した、神秘的でかわいい生き物です。大きな耳のようなヒレ、まん丸の目、ふわふわと漂う泳ぎ方——その姿はまるで深海から来たぬいぐるみのよう。しかし生態の多くはまだ謎のままで、今後の深海探査によって新たな発見が期待されています。
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