No.58 — DEEP SEA SPECIES
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ギンザメとは?サメでも魚でもない「幽霊ザメ」の正体と生態


ギンザメとは?基本情報

ギンザメは、サメやエイと同じ軟骨魚類に属しながら、進化の歴史が大きく異なるキメラ目(ギンザメ目)の深海魚です。英語では「Ghost shark(幽霊ザメ)」「Ratfish(ネズミ魚)」「Chimaera(キメラ)」とも呼ばれ、その神秘的な外見に見合った名がつけられています。

項目詳細
学名(日本産代表種)Chimaera phantasma(太平洋ギンザメ)
分類軟骨魚綱 ギンザメ目 ギンザメ科(Chimaeridae)
英語名Ghostshark / Chimaera / Ratfish
体長80〜120cm(尾を含む)
体色銀灰色〜白色(淡い銀色がかった体)
生息水深200〜1,500m(種によっては2,000m以深)
分布北西太平洋(日本・中国・朝鮮半島沿岸など)
食性甲殻類・軟体動物・棘皮動物(海底で採食)
特徴独立した上顎骨・毒棘・卵鞘(卵を産む)

「サメでも魚でもない」——ギンザメの分類

4億年前に分岐した古代系統

ギンザメの仲間(キメラ目)は、約4億年前にサメ・エイの祖先系統から分岐した非常に古い系統です。

現在のサメ・エイと共通の祖先は持ちますが、その後まったく独自の進化の道を歩んできました。このため、ギンザメはサメでもエイでもない、独立したグループ(軟骨魚綱キメラ目)として分類されます。

サメとの違い

特徴ギンザメサメ
上顎頭蓋骨に固着(独立していない)独立した上顎骨
えらえらぶた(鰓蓋)で覆われている鰓孔がむき出し(複数の孔)
生殖卵鞘(卵嚢)を産む多様(卵・胎児)
側線皮膚表面に鮮明に現れる溝状側線管が皮膚に埋まる
皮膚滑らかざらざら(皮歯)

体の特徴——ギンザメを「幽霊ザメ」たらしめるもの

長い鼻と独特のシルエット

ギンザメの顔は、とがった長い鼻と大きな緑色の目が際立ちます。鼻や頭部の周囲には、電気・振動を感知する感覚器(ロレンチーニ器官に類似した器官)が発達しており、暗い海底でも獲物を探知できます。

尾は細く長く鞭のように伸び、泳ぐときにゆったりとくねらせます。このゆったりとした漂うような泳ぎ方が「幽霊(ゴースト)」の名の由来とも言われます。

毒棘——触れてはいけない背中の棘

ギンザメの背中には、毒腺を持つ1本の鋭い棘が背鰭の前縁に立っています。この棘は捕食者への防御武器で、皮膚を貫通すると強い痛みを引き起こします。漁師が誤って触れて負傷する事故も報告されています。

卵鞘(らんしょう)——「人魚の財布」

ギンザメは卵鞘(卵嚢)と呼ばれる革のような袋に包まれた卵を海底に産みます。この卵鞘は「マーメイドパース(人魚の財布)」と呼ばれ、海岸に打ち上げられることがあります。

内部で稚魚が成長し、ある程度育つと卵鞘を破って孵化します。これはサメやエイの仲間と共通の特徴です。


深海での生活——海底採食者

ギンザメは主に深海の海底付近を泳ぎながら、甲殻類・軟体動物(二枚貝・巻貝)・棘皮動物(ウニ・ヒトデ)を採食します。

口の中には板状の歯板(歯板列)が発達しており、貝殻や甲殻類の外骨格を砕くのに適した形をしています。サメのような鋭い牙ではなく、すり潰し型の歯板を持つことがギンザメの食性の特徴です。


日本とギンザメ

日本近海では主に太平洋ギンザメ(Chimaera phantasmaテングギンザメなどが確認されています。駿河湾・相模湾・東シナ海など、水深200〜1,000m程度の深海で延縄漁・底曳き網漁の混獲として捕獲されます。

食用としての価値は低く、市場に出回ることはほぼありませんが、肝油(スクアレン)が含まれることから、かつては化粧品・健康食品の原料として注目されたこともあります。


まとめ——4億年の孤独な進化

ギンザメは、4億年という長い時間をかけて独自の進化を遂げた「深海の異端児」です。

深海の底を静かに泳ぐギンザメ——そのゆったりとした姿は、億年単位の時間を超えてきた生命の落ち着きを感じさせます。

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